Blockchain Topic Report|2018,May,Week3
2018年5月3週目(5月14日〜5月21日)のブロックチェーン業界の動向をまとめます。
尚、本記事では市況・投資領域、規制・政治領域については、業界全体を見渡しつつ、ビジネス・事業領域、プロトコル領域についてはEthereumに関連したプロジェクトに注目して、トピックを整理しています。
市況・投資領域
市場の動向・一般的な財界プレイヤーの言動について
ウォールストリートジャーナル、19%のICOが詐欺と発表
同社は1450件のICOを対象に調査をした結果、そのうち271件が詐欺まがいであると判別されました。 これらのうち既に閉鎖したものや裁判にかけられているものも多く、投資家の被害総額は約27億3千ドルにも及ぶと推定されています。
取引所や交換業者の動向について
仮想通貨取引所Geminiがニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)からライセンスを取得
NYDFSからライセンスを認可された仮想通貨取引所は、これで5社目です。また同社代表であるウィンクルボス兄弟はライセンスを取得すると同時に、Zcashの取り扱いを開始すると発表しました。
仮想通貨取引所大手Bitfinexが、一部の顧客の税金関連の情報を要請
同社はタックスヘブンとして知られるイギリス領バージン諸島に位置しており、今回の要請は島の法律に基づいているとのこと。 またメールにて取引所は提出された情報を、ユーザーの国の政府に提出する可能性もあると記載しています。
Calfin Global Crypto Exchange (CGCX)がICOを実施
法定通貨為替と仮想通貨交換、ICOを複合的に行うプラットフォームを目指します。ICOは6/1-6/30までの期間の行われます。
ハッキング被害に遭った仮想通貨取引所Coincheck、4種類の匿名通貨の取り扱いを中止
5/18に、仮想通貨取引所Coincheckはモネロ、Zキャッシュ、ダッシュ、オーガーの4種類の匿名通貨を、6/18付で取り扱いを廃止すると発表しました。 元CEOの和田氏は、「今後の暗号通貨の発展にトランザクションの秘匿化は欠かせない、その思いから取り扱いをしていましたが、AMLの観点より今回の結論となりました」とツイートしました。
まとめ
Coincheckが匿名系通貨の取り扱いを停止したことと、ニューヨーク州金融サービス局が2015年に設けて以来5社しかない、取引ライセンスをついに取得したGeminiが、Zcashの取り扱いを始めたこととが好対照です。
政治・規制領域
各国の政府や規制当局の法制
中国政府が仮想通貨の格付けを発表
中国産業情報技術省の情報産業発展センター(CCID)は5/17日に、仮想通貨の格付けを行い、そのランキングを発表した。 基礎技術、応用性、イノベーション能力の3つの軸から審査された結果、イーサリアムが1位、ビットコインは13位になりました。 > 詳細はこちら
ウクライナ国会議員、仮装通貨関連法案の下書きを世界中のユーザーと共同編集
ウクライナ国会議員Alexei Mushakは自身のFace Bookで政府が仮想通貨を合法化する方向性で法案を作成していると発表した上で、法案の下書きをGoogle Documentで共有した。 これに対して、約40人のユーザーが編集に参加しました。 ウクライナ政府は以前より仮想通貨へ肯定的な姿勢を見せており、独自の仮想通貨の発行も検討しているという発言もあるとのことです。
テキサス州証券局は、人気女優の指示を偽装したICOを強制停止
テキサス州証券局は5/16、アメリカの人気ドラマ「フレンズ」のレイチェル役で知られる人気女優Jennifer Anistonなどの著名人の名前や写真を不正に使用していたとして、 当局は「名前は違えど、このようなプロジェクトは似たような手口を使う。金銭的なリターンを全面に強調して、様々なオンライン情報を使ってユーザーを騙す」とコメントしました。 > 詳細はこちら
韓国税関(KSC)、輸出入検査にブロックチェーンを試験活用
KSCは商品の輸出入に伴うデータや積荷の検証にブロックチェーンベースのシステムを、自国企業50社を対象に試験導入すると発表しました。 Korea TimesによるとKSCはブロックチェーンに基づいた税関データベースプラットフォームを作成し、今まで紙や人に大きく依存してきた通関手続きを効率化したいとのことです。
タイ政府は、仮想通貨の個人投資家に対し7%の付加価値税(VAT)免除
三月中旬に発表された規制では、投資家がリターン時に払う15%の譲渡所得税に加え、7%のVATを支払う必要があるとのことでした。 しかしこの法案への批判が高まり、今回VATの7%が免除されました。投資家は依然として15%の譲渡所得税はしはらわなければなりません。
米国証券取引委員会(SEC)は、偽のICOサイトを立ち上げ、投資家達の危機意識を煽る
米証券取引委員会(SEC)投資家教育支援局5/16、偽のICOサイトを立ち上げたと発表しました。 投資家達に詐欺目的のICOサイトの特徴を伝え、投資家教育を推進することが目的とのことです。
マルタ政府が、ブロックチェーンミドルウェアであるOmnitudeと提携
この提携を通して、マルタ政府は公共運送サービス全体の底上げを目指すとのことです。
プーチン大統領は、ロシアの「デジタル法案」は仮想通貨決済を合法化するつもりはないと主張
現在ロシアで開発が進む暗号通貨技術だか、国内では議論は別れており、ロシア大統領のプーチンも「暗号通貨をそのまま法的な支払手段として確立することはない」と考えています。反面、スマートコントラクトやトークンの概念は積極的に採用していく姿勢も見せています。
まとめ
中国政府の仮想通貨格付けで1位を獲得したイーサリアムですが、ロシアにおいても「仮想通貨は法的な決済手段たりえないが、スマートコントラクトとトークンは活用していく」という姿勢が見られ、世界中の政府から高い評価を得ていることがよく分かります。
ビジネス・事業領域
一般的な事業者のブロックチェーン技術導入・業界参入
JPモルガン、クライアントの仮想通貨投資をサポートする戦略を考案中。
同社代表のJamie Dimonは以前、「ビットコインは詐欺だ」などの仮想通貨業界に対してひはんてきな姿勢を見せていました。しかし、近年投資家の仮想通貨投資への需要が爆発的に増えたことから、今回の戦略立案に至ったとのことです。
インドのIT大手インフォシスが、7つのプライベートバンクと提携
インフォシスは今回の提携と通してブロックチェーンベースの貿易金融ネットワーク India Trade Connect (ITC)を開発しました。ネットワークは貿易金融における、本人確認や身分証明書確認などのプロセスを簡略化する。
イスラエルのテルアビブ証券取引所が、アクセンチュアなどと提携
テルアビブ証券取引所はアクセンチュアやイスラエルのテックハブであるThe Floorなどと提携をし、ブロックチェーンベース有価証券貸借プラットフォーム(BSL)の開発を目指します。
米国決済サービス会社Circle、Bitmainと提携
あの大手仮想通貨取引所「Poloniex」を買収したことで有名なCircleは5/16、中国最大のマイニングファームBitmainと提携し、USドルのペッグ通貨、USDCを発行すると発表しました。今日存在するペッグ通貨は財政面、運用面において不透明であり、規則のない状態で運用されていることが課題であるとみなし、今回のペッグ通貨の開発に至ったとのことです。
ロシアの銀行SberbankCIBがロシア内初のブロックチェーンを利用した商業債券取引を実行
今回約1200万ドルの商業債権が取引されたとのことです。
スペインのサンタンデール銀行は、株主総会でブロックチェーン投票を導入
ヨーロッパ最大規模の銀行であるサンタンデール銀行は17日、株主総会の議決権投票のブロックチェーン技術を導入したことを発表しました。これは世界初の試みとのことです。
ブロックチェーン企業の新規発足やマス向けの市場展開について
Aragon One発表
分散型組織の開発を目指すAragonが、株式会社Aragon Oneをスイスに設立しました。
スイスのブロックチェーンデータプラットフォームStreamr、リアルタイムデータマーケットプレイスのロンチを発表
CoinDeskが主催する仮想通貨事業者を対象とした大規模カンファレンス、Consensus 2018でスイスのデータプラットフォームであるStreamrが新しいリアルタイムデータマーケットプレイスをロンチしたことを発表しました。プラットフォーム上でデータコンシューマーはプロバイダーより、データを購入することができるとのことです。またStreamrはこの時、テレコミュニケーション技術に特化したNokiaやデータ分析システムを提供するOSIsoftとの提携を発表しました。
ブロックチェーンID認証プラットフォームCivicが、自社のID管理プロトコルをビール自販機に試験導入
Consensus 2018でCivicは、自社のPoC(Proof of Concept)ID管理プロトコルをビール自動販売機に試験導入したことを発表しました。Civic app登録者はQRコードをかざすだけで、一切の年齢確認手続きをせずにアルコールを購入できます。同社代表は、今回の試験が成功すればアルコールだけではなく、年齢確認が必要な全ての製品の応用可能だと証明できると説明しました。
イーサリアム企業連合(EEA)が企業間のブロックチェーンの相互運用性を改善するEEA CS 1.0をロンチ
イーサリアムのスマートコントラクトをエンタープライズレベルで使用可能にすることを目指す企業連合であるEEAは16日、新しいフレームワークであるEEA CS 1.0を発表しました。このようなオープンなエンタープライズ用フレームワークを公開することで、企業は複数のプラットフォームのプロトコルを使用せずに費用を抑えることができ、トランザクションスピードも改善することができるとのことです。
まとめ
世界中の金融サービスが実証研究を終え、徐々に開発・導入のフェーズに移りつつあります。それに呼応するかのように、EEAがエンタープライズ用のスマートコントラクトフレームワークを発表するなど、いかに現実のサービスに組み込むかに挑戦する企業が増えてきました。
プロトコル領域
事件やニュース・トピックス
BCHハードフォーク
今回のハードフォークで、ブロックサイズを8MBから32MBに増加し、ビットコインスクリプトのオペレーションコードが追加されました。
Monacoinが攻撃を受ける
今回仮想通貨取引所に対してSelfish Mining攻撃が実行され、ダブルスペントが成功してしまいました。
コーネル大学のEmin Gun Sirer教授が、新たなコンセンサスプロトコルを開発したと発表
教授は17日にニューヨークで行われたToken Summit IIIにて、自分たちが「クラシカルコンセンサス」と「ナカモトコンセンサス」を融合した新しいアルゴリズムを開発したことを明らかにしました。
QuantstampがIICOのスマートコントラクトを編集する
IICOはトークンセールの公平性を改善する構想であり、ホワイトペーパーはJason TeutschやVitalikなどによって作られました。
主要なプロジェクトのプロトコル開発(ローンチやアップデート、週報など)
Statusのalpha 0.9.18がリリース
記事では最新バージョンへのアップデート方法や使用方法をが紹介されています。
0xProtocolがv2.0の詳細を発表
ERC721への対応方法などの詳細が公開されました。なおロンチは7月後半になるとのことです。
Solidity v0.4.24へアップデート
制御フロー解析を通して初期化されていないストレージポインタを検出できるようになりました。
EOSがDPOS BFTについて解説
この記事に対して、Vitalikもコメントをしています。
GnosisがSolidity Delegate Proxy Contractsについて技術ブログを公開
proxiesによってデプロイ後もコントラクト内容を更新することが可能になりますが、その一方でコントラクトオーナーがユーザーの利に反したアップデートを行うリスクが発生します。この記事ではこのリスクを最小限に抑える方法が記載されています。
Casper FFG v0.2.0について
デプロイ方法の変更などについて記載されています。
ERC1078が提案される
ENSサブドメインを使ったサインインやログインが可能になります。
EIP1080が提案される
EIP1080はチャージバックや盗難防止を目的とした標準規格であり、ERC20、ERC721に対して、盗難されたトークンやアカウントの回復やチャージバックに対応する標準APIを提供します。
Parity 1.11リリース
プライベートトランザクションが可能になりました。
Remix IDE 0.6.3リリース
承認プロセスやUIにて変更点が多数ありました。
EOSIO DAWN4.0の発表
EOSIO DAWN4.0が5/11にリリースされました。この記事ではその詳細が記載されています。
KyberNetwork週報:新規UI、新規トークンリスティング
先週KyberNetWorkの社長がIEOの開発とリブランディングの実行を発表しましたが、今週はその下準備に時間を費やしたとのことです。また新規取り扱い通貨として新しくIOST, STORM, MOT, DGX, ABTの5つのトークンが追加されました。
TRON週報:スーパーノードの申し込み規則が発表されて以来、申し込み団体は50を超えた
欧米・中国・東南アジア・東京にも拠点ができるとのことです。
Zilliqa週報:テストネットのクローズテスト終了間近
また5/23にシンガポールで行われる進捗報告イベントで、Scilla ver.1をリリースするとのことです。
Augur週報:REPトークンコントラクトが7/9にEthereumメインネットにデプロイすることを発表
この時全てのREPトークンは新しいREPコントラクトに統合される必要があり、EtherDelta/ForkDelta, IDEX and OasisDEXなどのDEXにてREPを保管してるユーザーは一度REPトークンを引き出し、最新のREPコントラクトに対応する必要があるとのことです。
MakerDAO週報
Airswap、Dether、Request Networkなどとの提携を発表しました。
OmiseGOのロードマップがインフォグラフィック化
現在はPlasmaCashとWalletSDKの開発に注力しているとのことです。
まとめ
印象的なのはBCHのハードフォークアップデートと、モナコインのセルフィッシュマイニングでしょうか。先週はConsensusで多くのプロジェクトが発表を行ったため、その内容については、またあらためてまとめたいと思います。