Blockchain Topic Report|2019,March,1
本記事では2019年3月1週目(2月23日〜3月1日)のブロックチェーン業界の動向をまとめます。主要なニュース・トピックを市況・投資領域、規制・政治領域、ビジネス・事業領域、プロトコル領域に分けて整理しています。
今週の概観
市況・投資領域
マルタの取引所であるOKExがレバレッジ上限を3倍から5倍へと上げた一方、日本ではbitFlyerがレバレッジ上限を15倍から4倍へと引き下げました。日本では2019年の5月にFATFの申告、秋に調査が行われる予定となっており、そのタイミングに向けて金融機関や暗号通貨業界がAML対策や法令遵守を推し進めています。
政治・規制領域
各国で着々とセキュリティトークンやAMLに関する法案が成立しつつあります。日本でも今国会で春〜6月ごろにかけて、昨年行われた仮想通貨交換業等に関する研究会の結果となる法律が提出されると見られています。
ビジネス・事業領域
日本ではソニー・富士通による外国人の日本語能力証明にブロックチェーンを活用する試みが報道されており、ブロックチェーンが課題解決にぴったりはまる良い事例となりそうです。
また、銀行の決済システムを開発するMonetaGoが基盤アーキテクチャをHyperledger FabricからR3 Cordaに変更するとのことで、パーミッションド型のチェーン間の競争や棲み分けがどのようになっていくかに注目したいところです。「パーミッション vs パーミッションレス」「パブリック vs プライベート」のような二元論ではなくなりつつあるのは、市場の成熟の証拠でしょうか。
プロトコル領域
EthereumのConstantinopleへのアップデートは予定通り実行されており、マイニング報酬も3ETHから2ETHへと減っています。まだ対応しているクライアントは多くないようです。
編集部コメント
今週は日本やロシアで金融作業活動部会(FATF)を意識した法整備や規制遵守への動きが見られて、FATFの影響力の大きさを実感しました。特に日本はマネー・ロンダリング対策で厳しい評価を受けているため、銀行や暗号通貨取引所が準備を進めています。
また、世界的な証券管理機構の団体が暗号資産カストディへの参入を模索しているとのニュースもありました。日本では法律改正によってカストディ関連にも規制が入ると見られており、今後の法律次第という部分も大きいので、引き続き金融庁や国会での動きに注目していきたいところです。
注目トピック
市況・投資領域
ドイツの大手銀行Deutsche Börseが運営するデリバティブマーケットであるEurexが、暗号通貨の先物を開始する用意をしていることが分かりました。Bitcoin、Ethereum、XRPの先物からスタートする予定とのことです。
> 詳細はこちら韓国の暗号通貨取引所であるcoinbinは、破産を申請しました。従業員の使い込みによって2600万ドル以上を失ったためとしています。
> 詳細はこちらラテンアメリカの大手投資銀行であるBanco BTG Pactual SAは、STOを行う予定だということが分かりました。ブラジルの不動産をトークン化し、1500万ドルを調達するとのことです。
> 詳細はこちらレンディングサービスのSoFiは、Coinbaseと提携することを発表しました。株やETFに続き、暗号通貨関係の新しいレンディング商品を2019年後半にローンチすると見られています。
> 詳細はこちらセキュリティトークン発行プラットフォームのTemplumは、Symbiontと提携することを発表しました。トークン発行をこれまでのEthereumではなく、Symbiontの提供するプライベートブロックチェーンで行っていくとのことです。
> 詳細はこちらマルタに拠点を置く暗号通貨取引所のOKExは、レバレッジ取引の上限を3倍から5倍に引き上げました。bitcoin, ethereum、bitcoin cash、 litecoin、ethereum classic、EOSの通貨でレバレッジ5倍の取引が可能となります。
> 詳細はこちら取引所のBitflyerは、4月下旬からレバレッジ上限を15倍から4倍に下げると発表しました。仮想通貨交換業協会の自主規制に則った形となります。
> 詳細はこちら
政治・規制領域
タイでは、有価証券をトークンで発行、取引することを認める法案が承認されました。今後、詳細なガイドラインが発表される予定となっています。
> 詳細はこちらロシアで、暗号通貨・ブロックチェーンビジネスを推進するための新しい法案が成立しようとしています。最終的には、石油にペッグしたステーブルコインを発行することも視野に入れているようです。
> 詳細はこちらロシアの最高裁は、AML関係の法律に暗号通貨の違法な取引を禁止する条項を追加する改正を行いました。法定通貨に交換されてすぐに犯罪集団に使われた場合、資金洗浄とみなされるように変更されたとのことです。
> 詳細はこちらオーストラリアの金融監督当局は、金融機関の国際的な取引報告の自動化にブロックチェーンを活用していくことを発表しました。AUSTRACは、メルボルンのSwinburne大学と提携して活用を進めていくとのことです。
> 詳細はこちらテキサス州で、4つの暗号通貨企業が投資家へのトークンオファリングを中止することが分かりました。未登録の証券販売に該当するため、各社25,000ドルの罰金を支払うとのことです。
> 詳細はこちらバーレーンの中央銀行は、暗号通貨に参入する意思を明らかにしました。国内の全ての暗号通貨取引は規制の下で行われる必要があると述べるガイドラインを提出しています。
> 詳細はこちら
ビジネス・事業領域
海外
アクセンチュアは、自然資源を保護する事業者に報酬を与えるような、ブロックチェーンを利用したサプライチェーンアプリのプロトタイプを開発したと発表しました。リサイクルがなるべく行われるような仕組みを、MastercardやEverledgerなどと提携して提供していくとしています。
> 詳細はこちら暗号通貨の非営利団体であるFusion FoundationはAutomotive eXchange Platform (AXP) と提携し、アメリカの中古車市場の保険やファイナンスにブロックチェーンを活用していくと発表しました。まずは中古車のデータをトラッキングできるようにするところから始めるとのことです。
> 詳細はこちらMicrosoft Azureが、Stratisと提携してICOプラットフォームを立ち上げる予定だと発表しました。コンプライアンスやスキャムにはしっかりと目を配っていくとのことです。
> 詳細はこちらブロックチェーンスタートアップのElectroneumは、暗号通貨のクラウドマイニングアプリをデフォルトで実装しているAndroidスマートフォンの発売を発表しました。価格は80ドルと非常に安くなっています。
> 詳細はこちら世界の30の中央証券保管機構から構成される団体が、暗号資産のカストディに参入する意思を見せています。また模索段階ということですが、DTCCやSIXなどの大きな機関も名を連ねています。
> 詳細はこちらスイスの大手銀行Julius Baerは、SEBA Crypto AGと提携して、暗号通貨サービスを投資家ポートフォリオに組み入れていく予定だと発表しました。どの通貨に対応するかなどは明らかになっていませんが、法規制に遵守して事業を展開していくとのことです。
> 詳細はこちら銀行向けにブロックチェーンシステムを開発するスタートアップのMonetaGoが、アーキテクチャをHyperledger FabricからR3 Cordaへ変更することが分かりました。R3 Cordaの方が、プライベートな取引のスケーラビリティが高いという判断とのことです。
> 詳細はこちらニュージーランドの暗号通貨取引所であるCryptopiaは、1月にハッキングによって盗まれた資産が約1600万ドルに相当すると発表しました。現在はアカウントを全て更新しており、Cryptopiaは過去のアドレスに暗号通貨をデポジットしないよう呼びかけています。
> 詳細はこちらセキュリティトークン発行プラットフォームのPolymathは、DEXにおいて法令に遵守したセキュリティトークンを交換する実験に成功したと発表しました。独自規格であるST-20トークンを、特定の条件を満たした場合にのみ移動できることを確認したとしています。
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国内
ソニーと富士通は、外国人の日本語成績証明にブロックチェーンを利用する実証実験を開始すると発表しました。日本語の学習履歴や試験結果などのデータをブロックチェーンで管理し、語学能力の正確な把握を目指すとのことです。
> 詳細はこちらサイバーエージェントは、ブロックチェーンを利用した個人データ活用プラットフォームの実証実験を開始すると発表しました。企業に情報を提供したユーザーはポイント等の対価を得られる仕組みとなっています。
> 詳細はこちらSoftbankは、アメリカのブロックチェーンスタートアップであるTBCASoftと提携し、ID認証サービスにブロックチェーンを活用していくことを発表しました。TBCASoftは、ゼロ知識証明と分散型台帳技術によって、ID認証をプライベートに、安全に行うシステムを提供しています。
> 詳細はこちらスマートコントラクト監査のQuantstampが、日本法人を設立することが分かりました。CEOのリチャード・マ氏は、日本はデジタル決済における重要な市場だと話しています。
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