Blockchain Topic Report|2019,March,15
本記事では2019年3月3週目(3月8日〜3月14日)のブロックチェーン業界の動向をまとめます。主要なニュース・トピックを市況・投資領域、規制・政治領域、ビジネス・事業領域、プロトコル領域に分けて整理しています。
今週の概観
市況・投資領域
今週は、スイスでXRPの上場投資商品(ETP)が予定されているというニュースがありました。スイスでは2018年に世界初の暗号通貨インデックスETPであるHODLを上場しており、他の通貨についても準備を進めているとのことです。アメリカでは未だETFが承認されておらず、今後スイスが金融機関の暗号通貨取引を牽引していく可能性もあります。また、Stellar Lumens(XLM)がCoinbase Proに上場し、順調に開発・利用が進んでいる印象を強めました。
政治・規制領域
アメリカコネチカット州では、オハイオ州に次いで、スマートコントラクトを契約の一種として法的に認める法案が成立しようとしています。コネチカット州は国際金融の中心であるニューヨーク市と、マサチューセッツ州ボストンの中間に位置しており「憲法の州」という異名を持つ法制的に重要なエリアです。
また、首都であるハートフォードは「アメリカの保険の首都」とも言われており、医療領域のブロックチェーン活用に注力するアメリカにおいてコネチカット州でこの法律が成立することは非常に大きな意味を持ちます。ある意味で将来の世界標準となりうる法案として考えられるでしょう。
また、マルタでは金融犯罪に対して監視を強めていく方針が発表されました。2月終わりにマネーロンダリングに関するIMFからの勧告を受けていることが影響していると考えられます。
ビジネス・事業領域
IBMが、Shuttle Holdingsという企業と提携し、暗号通貨カストディのインフラとなるツールを提供していくと発表しました。カストディに新規企業が続々参入する中で、流れを大きく変える可能性があります。
また、NYTimesがブロックチェーンを用いた実証実験を行っていく予定だということが分かりました。これを皮切りに、既存メディア業界のブロックチェーン利用が進んでいくかもしれません。
プロトコル領域
ブロックチェーン間の相互運用性をもたらすミドルウェアプロトコルである、COSMOSのメインネットがローンチしました。2016年に計画が発表されてから約3年かけていよいよといったところで、今後の利用と開発に注目していきたいです。
また、Maker DAOのステーブルコインであるDAIがインフレし、USドルから価格乖離が生じていることを受けて、安定性手数料引き上げが投票で決定されました。インフレの背景には、DAIのレンディングなどが発達してきており、DAIの生成が大きく増えているものの利用が少ないという事情があります。
編集部コメント
日本では、コインチェック事件が北朝鮮のハッカーグループによるものだというニュースが注目を集めました。同国と外交的に緊張関係にあるアメリカなどは、経済制裁を行っても抜け道があるような現在の状態を好ましくないと見ているでしょう。今後の規制関連の議論にも影響を与えそうです。
その半面で、オハイオ・コネティカットなどリベラルで裕福なニューヨーク近辺の州で次々とブロックチェーン領域の活用が見出されているのは、ある意味でアメリカという国の二面性を表わしているのかもしれません。
また、サプライチェーンやクレジットカード業界など、既存業界でのブロックチェーン利用がいくつか報道されていました。中でも、NYTimesがブロックチェーンの実証実験を行おうとしているというニュースは、今後大手メディアがブロックチェーンを利用したコンテンツプラットフォームに参入する可能性を示唆しており、興味深いですね。
トピック
市況・投資領域
暗号通貨取引所のCoinbase Proに、ステラルーメン(XLM)が上場しました。XLMは個人間の決済を簡略化することを目的として作られ、現在時価総額は8位となっています。
> 詳細はこちらUSドルにペッグしたステーブルコインを発行するPAXOSは、レアメタルや株式のトークン化を行っていく予定であると発表しました。2019年にはまずレアメタルのトークン化を行っていくと見られています。
> 詳細はこちらロンドン証券取引所は、ブロックチェーン企業の上場投資信託(ETF)を上場しました。このETFは、マイニングチップ製造企業など46のブロックチェーン企業に投資を行っているとのことです。
> 詳細はこちらスイス証券取引所(SIX)は、XRPに連動した上場投資商品(ETP)を上場するつもりだということが分かりました。2018年に既に複数の暗号通貨価格に連動するETPであるHODLを上場しており、ETPの中で最も大きな取引高があるとのことです。
> 詳細はこちらフランクフルト取引所を運営するDeutsche Börseグループは、デジタル資産のエコシステムを形成するためIT企業のSwiss.comとフィンテック企業のSygnumと提携することを発表しました。Deutsche Börseはブロックチェーンを利用した証券レンディングなどにも積極的な姿勢を見せています。
> 詳細はこちら暗号通貨取引所BinanceのCEOであるCZは、アルゼンチンで法定通貨から暗号通貨を購入できる取引所立ち上げを考えていると明らかにしました。Binance Labなどから資金を調達しているいくつかのプロジェクトは、既にアルゼンチン政府からも投資を受けているとのことです。
> 詳細はこちら韓国のチャットアプリを運営するKakaoが、プライベートのトークンセールで約100億円を調達したことが明らかになりました。Kakaoは2018年3月からブロックチェーンへの参入意思を見せており、6月にブロックチェーンプラットフォームをローンチする予定です。
> 詳細はこちら中国のマイニングチップ製造企業のCanaanが、数億円の資金調達を行ったことが明らかとなりました。企業価値は1000億円以上と見積もられているとのことです。
> 詳細はこちらタイ証券取引所は、2020年にデジタル資産のプラットフォームを立ち上げる予定だと明かしました。そのためにまずは、インフラ部分のデジタル化から進めていくとのことです。
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政治・規制領域
国連安全保障理事会の報告書は、北朝鮮が仮想通貨取引所にサイバー攻撃をしかけ、総額640億円を盗み出していた可能性を指摘しました。北朝鮮のハッカー集団であるLazarus Groupは、日本のコインチェック事件などにも関与していると見られています。
> 詳細はこちらバーゼル委員会は、銀行に対して暗号資産に関するリスクの警告を行いました。委員会は、暗号資産は従来の金銭と同様に信頼できるわけではないとしています。
> 詳細はこちらアメリカコネチカット州では、スマートコントラクトのビジネス利用を法的に定義する法案が提出されました。スマートコントラクトが契約としてみなされるという内容の法案は、既にオハイオ州でも成立しています。
> 詳細はこちらアメリカテキサス州で、暗号通貨を受け取った場合には、送り手のアイデンティティを確認する必要があるという内容の法律が成立しました。ただし、ウォレットを作るときに認証が必要な暗号通貨に関してはこの限りではないとしています。
> 詳細はこちらドイツの金融省は、ブロックチェーン上でデジタルトークンとして発行された有価証券を法的に認めるとの声明を出しました。必ずしも紙で発行される必要はなく、どのような形であろうと有価証券の法律で規制していくとのことです。
> 詳細はこちらメキシコ銀行は、一般人が暗号通貨や資産を取り扱うことを禁止しました。暗号通貨の利用は、金融機関やカード会社などの企業に絞られるとのことです。
> 詳細はこちらマルタ金融当局は、暗号通貨の追跡を行うCiberTraceと提携し、金融犯罪の対策を進めていくと発表しました。取引所やAMLなどのデータを分析していくとのことです。
> 詳細はこちらタイの証券取引委員会は、国内で初めて正式にICOポータルに認可を与えました。認可された海外の企業は、KYCやICOのデュー・デリジェンスを行い、選抜するといった業務を行うことができるとのことです。
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ビジネス・事業領域
世界4大会計事務所のひとつであるアーンスト・アンド・ヤング(E&Y)は、暗号通貨の会計ツールを提供すると発表しました。アメリカ国内の法人・個人顧客に向けて、確定申告やレポーティングをサポートするとしています。
> 詳細はこちらRipple社のネットワークであるXpringは、ゲームスタートアップのForteと提携し、ゲーム業界におけるブロックチェーンの利用を推進するためのファンドを組成しました。ファンドは100億円以上の金額に上り、約50,000人以上のデイリーアクティブユーザーを持つゲームを開発している企業をターゲットとしているとのことです。
> 詳細はこちらブロックチェーンを利用したブラウザのBraveは、広告を閲覧した利用者への支払いを開始しました。既にブラウザダウンロード数は2000万を越えており、支払いはBATトークンによって行われるとのことです。
> 詳細はこちら北アメリカ最大手のシーフード企業であるBumble Bee Foodsは、ブロックチェーンを利用した、マグロが捕獲されてからテーブルに乗るまでの追跡を開始しました。QRコードを読み取ることで、各事業者の情報や、マグロの情報が見られるようになっているとのことです。
> 詳細はこちらアメリカのクレジットカード企業の連合であるCU Ledgerは、IBMのHyperledger Fabricを利用した実証実験を予定していると発表しました。既存のビジネスプロセスの改善と新しいビジネスモデルの模索を行っていくとのことです。
> 詳細はこちらNew York Times紙は、ブロックチェーンを利用したニュース配信の実証実験を行う予定だということが分かりました。そのためのスキルセットを持った、人材の採用を開始しています。
> 詳細はこちらアメリカの投資企業であるShuttle Holdingsは、IBMと提携し暗号通貨のカストディツールを提供する予定だと明らかになりました。カストディそのものではなく、企業がカストディサービスを簡単に行えるようなHSMを利用したツールを提供していくとのことです。
> 詳細はこちらオンライン銀行グループのSwissquoteは、暗号通貨のカストディサービスを3月21日に開始すると発表しました。Swissquoteは、既にBitstampと提携し暗号通貨取引サービスを提供しています。
> 詳細はこちらアラブ首長国連邦の不動産デベロッパーであるEmaar Propertiesは、顧客や提携企業向けに「エマール・コミュニティ・トークン」を開発することを計画しています。同社の所有する娯楽施設やショッピングモールなどで利用できるようになるとのことです。
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プロトコル領域
USドルにペッグしたステーブルコインを発行するテザー社は、USドル以外の資産も担保に含めているという内容へとWebサイトの情報を更新しました。2018年にテザー社が十分なUSドルを保持していないのではないかという疑惑がありましたが、十分な担保を持っているとの情報も銀行から出ていました。
> 詳細はこちらMakerDAOによるステーブルコインのDAIでは、安定性手数料を1.5%から3.5%に引き上げることが投票によって決定されました。インフレが起こり、USドルから価格が離れつつある状況を改善するためとのことです。
> 詳細はこちらブロックチェーン間の相互運用を目的とするミドルウェアプロトコルのCOSMOSが、メインネットをローンチしました。異なるチェーンのトークンを交換できるようになるのは、バリデーターがInter Blockchain Communication(IBC)プロトコルの承認を行ってからとのことです。
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