Blockchain Topic Report|2019,March,22
本記事では2019年3月4週目(3月15日〜3月21日)のブロックチェーン業界の動向をまとめます。主要なニュース・トピックを市況・投資領域、規制・政治領域、ビジネス・事業領域、プロトコル領域に分けて整理しています。
今週の概観
市況・投資領域
今週は、取引所Coinbase ProやitBitで手数料の改定がありました。Bithumbの人員50%カットの話もあり、暗号通貨の冬の時代と言われる中で、取引所間の競争激化を象徴しているといえるでしょう。
また、Binanceがオーストラリアで暗号通貨売買や利用をサポートするBinance Liteを立ち上げるとのニュースもありました。オーストラリアは公的機関もブロックチェーンの活用に積極的なため、Binance Liteは大きく発展する可能性もあるでしょう。
政治・規制領域
暗号通貨凍結や紛失が騒がれたQuadrigaCX事件のあったカナダでは、暗号通貨関連の規制を整備しようと金融当局が動いています。ショート取引や証拠金取引などが目下禁止される見込みで、取引所をはじめとした暗号通貨ビジネスが強く制限されそうです。
また、日本では仮想通貨交換業に関連した資金決済法と金融商品取引法の改正案が閣議決定されました。金融商品取引法の中に新しく仮想通貨交換業の種別規定を設ける方針とのことで、だいぶ法制度が複雑化しそうです。
ビジネス・事業領域
IBMとStellarによる国際的な銀行間決済プロジェクトであるWorld Wireが、本格的に稼働し始めました。Ripple一強だったところに参入する形となるため、領域に大きな変化がもたらされる可能性もあります。
またテキサス州の祭典では、仮想通貨を利用して酒類の購入が行える自動販売機が試験的に設置されました。ブロックチェーンを利用した身分証明システムを組み込んでおり、次世代決済システムへの第一歩として注目していきたいところです。
プロトコル領域
大手音楽ストリーミングアプリのPlaylistは、先週ローンチしたCOSMOSを利用したDappを開発すると発表しました。ユーザー体験が大きく変化しない点を重視しているとのことで、日常的な生活圏の裏でブロックチェーンが利用されている未来が現実的なものとなりつつあることを実感します。
編集部コメント
今週は、仮想通貨交換業関連の改正法案が閣議決定しました。昨年末に発表された検討会報告とほぼ相違ない内容で、証拠金取引の倍率が4倍までに制限されたり、取り扱う暗号資産の変更を事前届出制にするなど、投資家保護やAMLの観点から従来法制に大きな変更が加えられる方針です。
これにより、取引所が匿名性の高い通貨を扱うことが困難になっていくことが見込まれます。フランスでも匿名通貨を禁止する方針が発表されていますが、まだ方向性を定めていない国も多く、今後の世界の動きにも注目していきたいところです。
同時に、金融商品取引法の中で明確にルールが定められることとなります。有価証券に該当する暗号資産について、デジタルトークン化されているものは全て第1項有価証券に該当するためです。これには新経済連盟から反論も出ていましたが、このまま法案が成立すれば、日本のセキュリティトークン関連ビジネスはかなり厳格なものとなっていくことが予想されます。
注目トピック
市況・投資領域
暗号通貨のデータを提供するCoin Market Capは、NasdaqやBloombergなどからのデータを合わせた暗号通貨インデックスの指標を提供すると発表しました。市場の90%を網羅したCMC200と、BTCを除いたCMC200EXの2種類を作成するとしています。
> 詳細はこちら暗号通貨取引所のCoinbase Proは、手数料の改定を行いました。テイカーだけでなく、メイカーからも手数料を徴収する仕組みに変更された一方で、高額取引の手数料は安くなっています。
> 詳細はこちらPaxosの運営する暗号通貨取引所のitBitは、メイカーが0.03%の手数料を得られるような手数料体系への変更を発表しました。背景には、暗号通貨取引への新規参入が減少し、取引所間の競争が激しくなっていることがあります。
[> 詳細はこちら](https://www.theblockcrypto.com/tiny/itbit-to-bring-maker-rebates-to-all-btc-and-eth-trading/シカゴ・オプション取引所は、3月中にBitcoinの先物を追加で上場しないという決定を下しました。現在の先物取引については継続するとしています。
> 詳細はこちらスペインの株式市場を運営するBolsas y Mercados Espanoles (BME) は、担保差し入れの確認にブロックチェーンを利用していくと発表しました。実証実験では、確認にかかる期間を80%減らすことに成功したとのことです。
> 詳細はこちらBinanceは、オーストラリアで法定通貨から暗号通貨を買えるBinance Liteをローンチする予定だと明かしました。全国に1300ある新聞売り場で法定通貨をデポジットすることができるようになるとのことです。
> 詳細はこちら暗号通貨取引所のHuobiは、3月26日に新規コイン発行プラットフォームを立ち上げる予定です。Binance Launchpadのライバルになると見られています。
> 詳細はこちら韓国の暗号通貨取引所であるBithumbは、50%の人員削減を発表しました。暗号通貨市場の低迷が原因となっており、現在の310人から150人程度へと削減する見込みです。
> 詳細はこちら
政治・規制領域
アメリカで、ブロックチェーンのロビイングを行う企業が増加していることが分かりました。特に証券に該当するデジタル資産の範囲といったことが関心の的となっているようです。
> 詳細はこちら調査企業のCipherBladeは、ウォール・ストリート・ジャーナルが発表した取引所の資金洗浄金額は過大に見積もられているという調査結果を発表しました。900万ドルとされていたShapeshiftの資金洗浄に関わる金額が、実際は230万ドル程度だったとしています。
> 詳細はこちらカナダの金融当局は、市場操作を防ぐため、暗号通貨のショート取引を禁止する方針を提案しました。また、証拠金取引も禁止する方針となっています。
> 詳細はこちらスイスの連邦議会は、内閣の参事会に対して、既存の法律を暗号通貨に適用するように求める方針を決定しました。強奪や資金洗浄などの問題に対処するためとのことです。
> 詳細はこちらイギリス議会では、政策立案者に向けてブロックチェーンのユースケースに関するプレゼンテーションが行われました。ブロックチェーン推進のための党派横断組織がオーガナイズし、IOTA、Oracle、Everledger、Lloyd’s of Londonが登壇したとのことです。
> 詳細はこちらフランスの商事裁判所は、企業情報データベースにIBMのHyperledgerを利用していく方針です。企業登記や支店解説などの登録変更にかかる時間を、数日から1日程度に短縮できるとされています。
> 詳細はこちら3月15日に、仮想通貨交換業に関する資金決済法と金融商品取引法の改正法案が閣議決定されました。証拠金取引の倍率を4倍までとする制限や、金商法上の登録の区分などを定めています。
> 詳細はこちら
ビジネス・事業領域
IBMと6つの銀行が、Stellarを利用した国際的な銀行間決済に向けて動き始めました。フィリピンのRCBCやブラジルのBanco Bradescoが参加しており、ステーブルコインやXLMを用いた決済を行っていくとのことです。
> 詳細はこちらFacebookの発行するステーブルコインであるFacebook Coinは、重要な収入源になりうるとバークレイズ銀行のアナリストが分析していることが分かりました。Facebookはブロックチェーンや暗号通貨の領域で人材採用を積極的に行っています。
> 詳細はこちらブロックチェーンを利用した身分証明サービスを提供しているCivicは、テキサス州の祭典SXSWで、CVCトークンを利用した自動販売機でのビール販売を行いました。酒類の販売と身分確認が同時に行えるようになっています。
> 詳細はこちらSNSを利用した暗号通貨の送金サービスであるSendCryptoは、Telegramに対応したことが分かりました。ただしまだデバッグが必要な状態としています。
> 詳細はこちらスペインのベンチャー企業である2getherは、VISAのプリペイドデビットカードで暗号通貨を取り扱えるサービスを開始する予定です。最初はBitcoinをはじめとした7種類の通貨に対応しており、手数料が無料となっています。
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プロトコル領域
音楽ストリーミングアプリのPlaylistは、COSMOSチェーンを利用したDappを開発していくと発表しました。これまでと変わらないユーザー体験を保ちながら、著作権が侵害されないように裏のシステムを置き換えるとしています。
> 詳細はこちらステーブルコインのDAIを運営するMakerでは、DAIの利子率を最大で4%へと引き上げる投票が提示されました。先々週に安定性手数料が3.5%に引き上げられたためと見られています。
> 詳細はこちらTezosチェーンでは、アップデートのための最初の投票が行われました。25,000以上の投票があり、Athens Aというアップデート提案が可決されています。
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