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Mar 08, 2018

金融機関様での講演#2「仮想通貨をどのように管理すればいいのか?」|EventReport

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GincoMagazine編集部
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金融機関様の社内勉強会に弊社COOの房安が登壇いたしました

先日、とある金融機関様の社内勉強会に弊社COOの房安が招待いただき、「仮想通貨・ブロックチェーンとは何なのか?」「正しく取り扱う方法は何か?」について講演を行いました。

この記事では、その内容の後半「仮想通貨をどのように管理すればいいのか?」の内容をご紹介したいと思います。

第一回「仮想通貨・ブロックチェーンをどう理解すればいいのか?」はこちらからお読みいただけます。

第一回

仮想通貨をどうやって管理すればいいのか?

個人的には「個々人の保有量、用途、リテラシーに合わせて、身の丈にあった管理方法を選ぼう」という考え方を大事にしています。

これを理解するためにも、まずは「資産を管理する」ということをフラットに見つめ直す必要があるでしょう。

そもそも資産は用途と保有量に合わせて分散管理するもの

資産を管理する上で、原則となる考え方は「分散管理」です。

仮想通貨に限らず、私たちが資産を保有する場所としては以下のようなものがあげられると思います。

・小銭入れ
・財布
・タンス預金
・生活用の銀行口座
・貯金用の銀行口座や貸金庫
・資産運用のための証券取引口座 etc…

このようにいろいろな保有方法がある中で、私たちは当たり前のように複数のツールを使い分けています。

このとき、私たちが念頭に置いていることは大きく分けて2つあります。

①その保有場所にどれだけの金額を入れておくか
②その保有場所にあるお金の用途は何か

例えば、100万円の現金をいつも財布に入れておく人はほとんどいないと思いますが、その理由は「それだけのお金を使うことがほとんどない」「それだけのお金を現金として支払う必要がない」というものでしょう。

同様に、資産運用のための証券取引口座に1万円しか入っていない、という人も多くはありません。これはトレードや資産運用のための原資として意味をなさないからです。

このように、そもそも資産の保管場所というのは、「用途」と「保有量」によっていくつか使い分けるもののはずです。

「セキュリティ」と「利便性」のトレードオフ

一般論として、セキュリティと利便性はトレードオフの関係にあります。

資産のセキュリティを強固にすればするほど、その資産を簡単に取り出すことができなくなります。

そのため私たちは、先述の用途と保有量のどちらにより重きを置くか、を選択しながら暮らしています。

「どんな用途で、どれだけの額を保管したいか」にもとづいて「どれくらい便利な保管場所で、どれだけ厳重に保管するか」を選び取っているのです。

このようなあたりまえの考え方を、仮想通貨管理でも行えばいい、と私は考えています。

ウォレットの種類と特徴を知って、自分にあった方法を選びましょう

講演の様子

次に具体的なウォレットの選び方ですが、Twitterなどでも「ソフトウェア型よりもハードウェア型の方が安全!」「コールドウォレットじゃないとダメだ!」といったような意見をよく目にします。

しかし、私は上述のような立場に立って「1つの方法を絶対視してはいけない」と考えています。

特に良くないのは保管方法ごとのリスクとメリットを理解せずに、誰かが言うとおりの方法を、背伸びして表面的に真似することです。

背伸びしてはダメな理由

例えば、保有額が10万円の人と10億円の人が同じ管理方法を取る必要はありません。また、よく分からずに買ったハードウェアウォレットは偽物かもしれません。取引所の流出事件でも騒がれたマルチシグを導入したら運用に失敗して引き出せなくなるかもしれません。

私に直に相談された方で以下のような状況がありました。

・ハードウェアウォレットを無くしてしまった。
・ペーパーウォレットにしたらペーパーを無くしてしまった。
・パソコンが故障した。デスクトップウォレットの復元フレーズはパソコンの中にメモしていた。
・スマホのウォレットに入れてたのに水没させてしまった。復元フレーズをメモしていなかった。

目的と用途をきちんと理解することなく、自分に適していない方法を選ぶと必ず失敗します。

資産管理は誰かの主義主張ではなく、自分の置かれた現実に即して行うのが一番です。

講演の様子

それでは具体的に、どんな場合にどのようなツールを使って保管すればいいのでしょうか?

それを判断するためには各ツールの特徴を知る必要があります。

個人的な考え方ですがウォレットを比較する時に大事な要素は秘密鍵が「どこに」「どのように」保管されているかだけだと考えています。ホットウォレットやコールドウォレットだといった名称で上っ面の話をしても本質的な理解にはつながりません。以下で詳しく解説していきます。

以下、各管理法についての構造やメリットとデメリットを解説してみたいと思います。 (※記事中で「秘密鍵」と表現するときは、マスターシードやニーモニックコードを含む資産アクセスコードのことを指します。)

それぞれの保管方法のメリット・デメリット

取引所で管理する

取引所の場合、秘密鍵は「取引所のサーバに」「ユーザー単位ではなくある程度まとめて」保管されています。

これは多くの方に危険視されていますが、ビギナーの方で少額の運用でしたら悪くないかもしれません。何故ならセルフゴックス(自分の管理ミスで資産を失うこと)がほとんどないからです。ただ、サーバ側が秘密鍵を預かっているために、自分だけのコントロール権が失われてしまい、さらに引き出し用のアドレスはユーザ単位では割り当てられていません。

メリット
・管理を任せれるので楽である(少額の仮想通貨を買ってから知識がつくまでは置いていてもいいかもしれません)。
・すぐにトレードをすることができる。

デメリット
・管理を任せてしまっているので、自分では対処できない危険に晒される。
・フィッシング詐欺などが横行している。
・取引所のメンテナンスなどで資産がロックされる可能性がある。

サーバ型のウォレットで管理する

サーバ型のウォレットの場合、秘密鍵は「ウォレット運営者のサーバに」「ユーザ単位に」保管されています。

これは日本ではあまり見ないタイプですが、「Blockchain wallet」や「Luno」などのウォレットがこれに当たります。このタイプのウォレットはウェブやアプリからアクセスでき、ユーザに秘密鍵が個別アサインされているが、サーバ側にそれが保管されているタイプです。

個人的にはメリットが薄いと感じています。おそらくユーザビリティをサーバ側で向上させながら、最低限のリスク分散を行っているというのが売りでしょう。

このタイプは取引所で管理するのと大差がないのであまりおすすめしません。実際blackwalletというウォレットが引き出し被害にあっていたのが記憶に新しいです。

メリット
・秘密鍵の個別化という意味では取引所より安全性は高い(かも)。

デメリット
・取引所の管理体制とあまり差がないので、使うメリットがほとんどない。

クライアント型のソフトウェアウォレットで管理する

こカテゴリはPCやスマホにインストールし、秘密鍵をユーザサイドで管理するクライアント型のウォレットを指します(勘違いされがちですが、MyEtherWalletはインストール不要のクライアント型ウォレットに当たります)。

このタイプのウォレットはユーザに秘密鍵管理を託すので取引所のようなカウンターパーティリスクは存在しません。またサーバ型以外のウォレットの中で最も手軽に使い始めることができます。安全さと手軽さのバランスが取れたウォレットです。

しかし、取引所とは違って自分で管理を行うウォレットなので、少しのミスで資産を失う可能性もあります。有名なウォレットにbreadやJaxx等があります。弊社でリリース予定のGinco(https://ginco.io)もこちらに当てはまります。

メリット
・気軽に導入でき、Dappsや買い物などで利用しやすい。
・端末内の堅牢な領域に保管されるため安全性が高い。

デメリット
・秘密鍵を紛失するとウォレット提供会社でも解決することはできない。
・端末のセキュリティが脆弱だと、マルウェアなどの被害に合うことがある。

クライアント型のハードウェアウォレットで管理する

こちらも見た目は違えどクライアント型ウォレットです。インターネットに繋がらない専用の端末を使って、秘密鍵を管理します。

ただ、この場合は普段から持ち歩いたり買い物に使ったりするのに少し不便です。セキュリティと利便性はトレードオフのため、気軽に動かし辛くなってしまいます。

メリット
・保管している間はオフラインのためハッカーの攻撃対象にならない。

デメリット
・資産を気軽に動かせない。
・端末自体にウイルスやマルウェアが感染するリスクがある。

ペーパーウォレットで管理する

こちらはおそらく究極のクライアント型ウォレットでしょう。

例えば、Facebookのザッカーバーグ氏との訴訟で有名なウィンクルボス兄弟は2,000億円近いビットコインを持っていると言われていますが、その秘密鍵を紙に書いた上でバラバラにし、アメリカ各地の銀行の貸金庫に保管していると公言しています。

彼らからビットコインを奪うには、アメリカ中の銀行に押し入って、全ての紙片をかき集めないといけないということです。

現在考えられる最も安全な保管方法として有名なこの逸話ですが、彼らもこの多額のビットコインを気軽に動かすことはできません。

メリット
・ハッキングされる可能性を無くせる

デメリット
・気軽に利用することはほとんどできなくなる

まとめ

これまでの説明を全て踏まえると、以下のようになります。

・仮想通貨はブロックチェーンを活用した分散型アプリケーションが普及した経済圏を前提にした新しいアセットクラスです。

・これらのアセットは、投資的な目線でのみ考えるのではなく「どれだけの量を」「どんな風に使いたいか」という目的のもと最適な方法で扱いましょう。

・最適な方法をきちんと選び取るには正しい知識を身につける必要があります。

現在、仮想通貨やブロックチェーンは金融の領域で多くのイノベーションを起こしています。

それらは全て「特殊な投資商品」ではなく「世の中をより良くするための全く新しい技術やサービス」です。

これらの技術やサービスを適切に扱うには、自分が普段当たり前に使っている技術やサービスが、どういった意味を持っているのかを考える目線が重要です。

変化の激しい時代だからこそ、新しい技術について正しい知識を蓄えつつ、既存の技術をフラットに見つめるようにしていきましょう。

登壇者紹介

房安陽平
房安陽平
株式会社Ginco COO
URL:https://ginco.io/
神戸大学大学院にて音声認識と自然言語処理などコンピュータサイエンスを専攻後、ブロックチェーンの技術開発会社にてUIUXを担当。その後はスマホのおサイフサービス「LINE Pay」の事業戦略を担当し、アライアンスやサービスグロースに携わる。現在は株式会社GincoのCOOを務める。公式ウォレットアプリケーション「Ginco」のプロダクトマネージャー。 GincoMagazineでは、ブロックチェーンを活用したサービス・アプリケーションに関連するコラムと、Gincoウォレットに関連するコミュニケーションを担当する。

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この記事を書いたライター GincoMagazine編集部
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